試験・信頼性・品質

加速寿命試験:Arrheniusモデルで寿命を推定する

加速寿命試験:Arrheniusモデルで寿命を推定する

エンコーダは十年の寿命を要求されるが、試験は数千時間しかできない。本稿は反応速度から加速係数の式を導き、LEDと接着剤の計算例で活性化エネルギーの影響の大きさを示し、模擬の三温度試験で外挿寿命の信頼区間を示し、モデルが崩れる典型例を列挙する。

エンコーダ内のLED光出力は時間とともに減衰し、コード板とハブの間の接着剤も劣化する。十年の連続運転(約8.8×10⁴ h)が求められると、実時間でそれだけの試験はできない。通例は温度を上げて劣化を加速し、モデルで試験時間を使用条件へ換算する。その換算係数がどれほどか、信頼できるかは、Arrheniusモデルの理解に依存する。

試験温度が40 ℃から105 ℃へ上がると、故障時間分布は対数時間軸上で形を変えずに全体が左へシフトする。その移動量が加速係数AF(Ea = 0.7 eV、仮定)
図1 – 試験温度が40 ℃から105 ℃へ上がると、故障時間分布は対数時間軸上で形を変えずに全体が左へシフトする。その移動量が加速係数AF(Ea = 0.7 eV、仮定)

反応速度から加速係数へ

多くの劣化過程(拡散、酸化、化学反応)の速度は次の形に従う。

R = A·exp(−Ea / (k·T))

ここでEaは活性化エネルギー(eV)、k = 8.617×10⁻⁵ eV/Kはボルツマン定数、Tは熱力学温度(K)、Aは温度に依らない定数である。

劣化量Dの変化を dD/dt = R(T)·g(D) と書き、gが劣化曲線の形を表すとする。故障判定D_fまで積分すると G(D_f) = R·t_f となり、故障時間t_fは速度に反比例する。gが温度で変わらない限り、使用温度T_uと試験温度T_sでの故障時間の比は

AF = t_u / t_s = exp[(Ea/k)·(1/T_u − 1/T_s)]

重要な帰結がある。温度は時間軸を一定倍率で圧縮するだけだ。したがって対数時間軸上では、異なる温度の故障分布は形を変えずに平行移動するはずであり(図1)、対数正規やWeibullで記述するときσや形状パラメータは同じであるべきだ。これが「機構が変わっていない」ことの第一関門である。

数値例:LEDと接着剤

LED、使用40 ℃、試験85 ℃、Ea = 0.7 eV(仮定):

1/T_u − 1/T_s = 1/313.15 − 1/358.15 = 4.012×10⁻⁴ K⁻¹ Ea/k = 0.7 / 8.617×10⁻⁵ = 8123 K AF = exp(8123 × 4.012×10⁻⁴) = exp(3.259) ≈ 26.0

つまり85 ℃で1000 hは、40 ℃で約2.6×10⁴ hに相当する。

活性化エネルギーの影響は極めて大きい(図2)。同じ40→85 ℃で、Ea = 0.3、0.5、0.7、0.9、1.1 eVのときAFはそれぞれ4.0、10.3、26.0、66.1、168。Eaが0.2 eV違うとAFは約2.5倍変わる。

使用温度40 ℃のとき、加速係数の試験温度・活性化エネルギー依存;85 ℃ではEaが0.5から0.9 eVへ上がるとAFは10から66へ
図2 – 使用温度40 ℃のとき、加速係数の試験温度・活性化エネルギー依存;85 ℃ではEaが0.5から0.9 eVへ上がるとAFは10から66へ

温度は故障部位の実温度を取る必要がある。LED消費30 mW、ジャンクション–周囲熱抵抗300 K/Wとすると、ジャンクションは周囲より約9 K高い。ジャンクション温度49 ℃と94 ℃で計算するとAF ≈ 22.0;周囲温度をそのまま使うとAFを約18 %過大評価する。

接着剤、使用60 ℃、試験105 ℃:Ea = 0.6、0.8、1.0 eV(仮定)のときAF = 12.0、27.6、63.1。さらに加速しようと試験温度を125 ℃へ上げるとAFは30~295になり得る。しかしその接着剤のガラス転移温度Tgが約110 ℃(仮定)なら、125 ℃ではガラス状態からゴム状態へ移り、クリープ・吸湿・反応経路が変わり得るため、このAF群は意味を失う。

活性化エネルギーはどこから来るか

Eaはある具体的な故障機構のパラメータであり、材料定数でもデバイス定数でもない。出典は三つある。

  • 同一機構の文献・業界データ。電子デバイスの一般的な機構ではEaはおおむね零点数eVから1 eV強のオーダー;
  • 同じ故障判定での部品・材料サプライヤの試験データ;
  • 自前の多温度試験。二温度なら Ea = k·ln(t₁/t₂) / (1/T₁ − 1/T₂)。

データが無いとき0.7 eVを既定に取ることが多いが、それは取り決めに過ぎない。Eaを過大評価するとAFも寿命も過大評価し、結論は危険側に偏る。

図3は模擬の三温度試験である。真値Ea = 0.70 eV、50 ℃の中央寿命10×10⁴ h、対数正規σ = 0.5、85・105・125 ℃で各10個のLED、故障判定は光出力70 %まで。データがモデルどおりに生成されていても、フィッティングはEa = 0.78 eV(90 %区間0.67~0.88 eV)、外挿した50 ℃中央寿命は14.4×10⁴ h、90 %区間は約8.9×10⁴~23.5×10⁴ hとなる。外挿が遠いほど区間は広がる。

三温度試験のArrhenius図:近似直線を50 ℃へ外挿、網掛けはブートストラップによる90 %区間(模擬データ)
図3 – 三温度試験のArrhenius図:近似直線を50 ℃へ外挿、網掛けはブートストラップによる90 %区間(模擬データ)

モデルが崩れるとき

  • 機構が温度で変わる:接着剤のTg超え、LED封止材の耐温超えで、使用条件には無い故障が現れる。
  • 複数機構が併存:Ea = 0.4と1.0 eVの二機構があるとき、高温試験は高Ea機構を主に増幅し、使用温度では低Ea機構が先に起き得る——試験がそれを覆い隠す。
  • 温度以外の応力:湿度にはPeck型の等温湿度モデル、温度サイクルにはCoffin-Manson関係が必要で、LED駆動電流自体も光減衰に影響する。
  • 打ち切りデータ:試験は一部試料の故障で終わることが多い。打ち切りを扱える最尤法を用い、既故障試料の単純平均にしてはならない。

工学上の要点

  • 温度はすべてケルビンに換算し、故障部位温度を使う。LEDはジャンクション温度、接着層は実測温度。自己発熱9 KでもAFは約18 %ずれる。
  • 少なくとも三温度を行い、各温度の分布形状パラメータが一致するか確認する。不一致は機構変化を意味し、外挿できない。
  • 最高試験温度は材料限界より余裕を見て下げる。接着剤はTg未満、LEDは許容ジャンクション温度未満。
  • 信頼できるEaが無いときは低めに取り、報告書に出典を書く。Eaを0.2 eV過大に見ると、85 ℃試験からの寿命換算は約2.5倍過大になる。
  • 故障判定はエンコーダ機能で定義する。例:自動利得が補償できない程度まで光出力が落ちた、信号振幅が下限を下回った、など。一律の「70 %」ではない。
  • 寿命報告は信頼区間と外挿距離を付け、単一値にしない。

まとめ

Arrhenius加速の本質は、温度が時間軸を一定倍率で圧縮することであり、AF = exp[(Ea/k)·(1/T_u − 1/T_s)]である。その信頼性はほぼすべて、Eaが実在する単一故障機構に対応し、高温でも機構が変わらないかにかかっている。多温度試験で形状の一貫性を確かめ、信頼区間を出すことで、加速試験の結論は支えられる。


中国語原文記事の翻訳 (0193). ENC7 コード板メーカー(お問い合わせ) · 技術記事 · https://enc7.com

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