信号トラブル事例集
症状:リサージュ図形が斜めの楕円になる――A/B位相誤差の原因と切り分け

リサージュ図形が45°の斜め楕円になるのは、A相とB相の位相差が90°からずれていることを示し、内挿誤差は1周期に2回、ピーク値は約φ/2です。本稿では読取り半径の偏差による位相誤差Δφ = 2π·(n + 1/4)·Δr/rを導き、アジマス角と回路遅延という2種類の原因と比較し、楕円から位相差を読む式と切り分けの順序を示します。
オシロスコープのX-YモードでA相とB相を描かせると、円ではなく、長軸が45°または135°方向を向いた斜めの楕円になります。2相の位相差が90°からずれているのです。この欠陥は振幅を変えないので、波形を見ただけでは気づきにくいのですが、内挿誤差に直接入り込みます。本稿では三つの問いに答えます。誤差はどれくらいか。位相差はコード板と組立のどこから来るのか。楕円からφを正確に読むにはどうすればよいか、またどんな順序で切り分けるか、です。

位相誤差はどれくらいか
A = cosθ、B = sin(θ + φ)とし、φを90°からのずれ角とします。atan2(B, A)とθの差から一定の原点オフセットを差し引くと、近似的に
Δθ ≈ (φ/2)·cos2θ
1信号周期に2回で、ピーク値は約φ/2(電気角)です。数値で確認すると、φ = 20°のときピーク値は10.16°で、この程度までは微小量近似で十分です。2048本では1信号周期が約632.8″、電気角1 radが約100.7″なので、1°の位相誤差は約0.9″の内挿誤差になります。
原因1:読取り半径の偏差によるピッチ不整合
読取りヘッド上のA相、B相の2つの検出フィールドは、測定方向に(n + 1/4)設計ピッチだけ離れています。nは整数です。コード板の目盛線は放射状なので、読取りヘッドが半径r + Δrの位置に取り付けられると、見える局所ピッチはp·(1 + Δr/r)に変わり、2つのフィールド間の位相差もそれに応じてずれます。
Δφ = 2π·(n + 1/4)·Δp/p ≈ 2π·(n + 1/4)·Δr/r
ここでΔp/pはピッチの相対不整合です。nが大きいときはΔφ ≈ 2π·n·Δp/pと書くことも多いです。計算例:2048本、r = 10 mm(p ≈ 30.7 μm):
| 2フィールドの間隔 | Δr = 10 μm | Δr = 30 μm | Δr = 50 μm |
|---|---|---|---|
| 交互配列(n = 0) | 0.09° | 0.27° | 0.45° |
| n = 4 | 1.5° | 4.6° | 7.7° |
| n = 8 | 3.0° | 8.9°(約7.8″) | 14.9° |
| n = 16 | 5.9° | 17.6° | 29.3° |
結論は明快です。A、Bの間隔の周期数が多いほど読取り半径に敏感になり、4相を1周期内に交互配置した配列はほとんど影響を受けません(図2)。同じメカニズムには二つの変形があります。コード板図面上の読取り半径やスリット数が読取りヘッドの設計値と一致しない場合で、これは大きな固定のΔrに相当します。もう一つは偏心eにより読取り点が半径方向にΔr = e·cosθだけ動く場合で、位相誤差がそれに伴って1回転に1回変化します。n = 8、e = 20 μm、r = 10 mmでは約±5.9°で、1回転の間に楕円が斜めになったり正しくなったりします。

原因2:アジマス角と段違い配置
A、Bの検出フィールドが目盛線方向(半径方向)に上下2段に分かれ、Δyだけ離れている場合、読取りヘッドが目盛線に対してアジマス角ψだけ回転すると、2つのフィールド間に位相差が加わります。
Δφ = 2π·ψ·Δy/p
p = 30.7 μm、Δy = 0.5 mm、ψ = 1 mradでは約5.9°ですが、このとき振幅はほとんど変わりません。読取りヘッドが設計位置から接線方向にΔtずれると、放射状の目盛線に対してはアジマス角Δt/rに相当します。アジマス角の振幅に関する公差は本ライブラリのアジマス角合わせの記事を参照してください。段違い構造では公差は位相誤差で決まり、はるかに厳しくなります。
原因3:回路遅延(最初に除外する)
2つのアナログチャネルのフィルタや配線の遅延がΔτだけ異なると、位相誤差はΔφ = 360°·f·Δτです。fは信号周波数です。2048本、3000 r/minではf ≈ 102 kHzで、Δτ = 20 nsで約0.74°になります。回転速度が2倍になれば誤差も2倍です。コード板とは無関係ですが、回転速度を変える試験で最も簡単に除外できます。
楕円から位相差を読む
振幅が等しいとき、楕円の長軸は常に45°または135°方向にあり、傾き角はφによって変わりません。φは2本の対角線の長さに表れます。45°方向の直径をD₁、135°方向をD₂とすると
D₂/D₁ = tan(45° − φ/2)、sinφ = (D₁² − D₂²)/(D₁² + D₂²)
長軸が45°方向ならBが進み、135°方向ならBが遅れています。φ = 15°でD₂/D₁ ≈ 0.767、φ = 1°では差は約1.7%しかなく、カーソルで正確に読むのは困難です。
振幅が異なると長軸は45°からずれ、傾き角は振幅比とφの両方の影響を受けるため、傾き角をそのまま換算に使うべきではありません。より確実な読み方が二つあります(図3)。
- 接点法:Aが最大値aに達したときB = b·sinφなので、sinφ = B(A最大時)/b。
- 相関法:整数周期分を取り込み直流を除いた後、sinφ = mean(A·B)/√(mean(A²)·mean(B²))。これは2信号の相関係数そのもので、オシロスコープの演算機能でもエクスポートしたデータでも計算でき、1°未満でも分解できる。

切り分けの順序
- 定量化:相関法でφとその符号を測り、内挿誤差に換算して予算を超えていないか確認する。
- 回転速度を変える:低速と高速でそれぞれ測る。φが回転速度に比例して変われば、チャネルの遅延とフィルタの整合を確認する。
- 1回転全体を見る:Zで区切ってφを測る。1回転に1回変化すれば、偏心と検出フィールド間隔nが重なっているので、まず芯出しを確認する。
- 半径方向位置を照合する:コード板図面の読取り半径と読取りヘッドの取付け半径を照らし合わせる。可能なら読取りヘッドを半径方向に±20 μm動かしてdφ/drを測り、等価な(n + 1/4) = (r/2π)·dφ/drを逆算して、読取りヘッドが分割フィールド構造かどうかを判断する。
- アジマス角を振る:読取りヘッドをわずかに回し、φが直線的に変化すれば検出フィールドは段違い配置である。調整は振幅最大ではなく直交誤差を基準に行う。
- 整合を確認する:以上をすべて除外したら、コード板のスリット数、読取り半径と読取りヘッドの設計値、および読取りヘッド自体の検出フィールド間隔を照合する。
設計上のポイント
- 斜め楕円の内挿誤差ピーク値は約φ/2:2048本では位相誤差1°あたり約0.9″。
- 分割フィールド構造の読取りヘッドでは、読取り半径の公差をΔφ = 2π·(n + 1/4)·Δr/rで配分する。n = 8、r = 10 mmでは30 μmの偏差で約9°になる。
- 交互配列は読取り半径に鈍感で、小半径や組立公差の広い用途に向く。
- 楕円の傾き角でφを読まない。振幅が等しいとき傾き角は常に45°なので、対角線の長短か相関係数を見る。
- φが回転速度で変われば回路、回転角で変われば偏心、アジマス角で変われば段違い配置を調べる。この3ステップで原因を切り分けられる。
- コード板図面の読取り半径とスリット数は読取りヘッドの設計値と項目ごとに照合しなければならない。一致しなければ、どんな調整でも救えない。
まとめ
リサージュの斜め楕円はA/Bの位相が90°からずれていることに対応し、内挿誤差は1周期に2回、ピーク値は約φ/2です。コード板と組立側の主な原因は読取り半径の偏差によるピッチ不整合で、その感度は2相の検出フィールド間隔の周期数に比例します。アジマス角は段違い構造に大きく影響し、回路遅延は回転速度とともに変わります。相関法でφを正確に読み、回転速度、回転角、半径方向位置、アジマス角の順に一つずつ調べれば原因を特定できます。
中国語原文記事の翻訳 (0205). ENC7 コード板メーカー(お問い合わせ) · 技術記事 · https://enc7.com
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