信号トラブル事例集
症状:リサージュ円の中心が原点からずれる――DCオフセットの発生源と切り分け

リサージュ円の中心が原点からずれているのはDCオフセットで、相対オフセットεは1周期に1回、約ε radの誤差を生み、2048本では1%で約1″です。本稿では受光の非対称が変調度で拡大されるε = κ/Mを導き、デューティ比、迷光、暗電流が効く条件を分析し、段階的な測定法と判定基準表を示します。
オシロスコープをX-Yモード、DC結合にすると、リサージュ円の大きさも形も正常なのに、中心が原点になく、どちらかに偏っています。これがDCオフセットで、AまたはBに位置によらない定数が重畳しています。これによる内挿誤差は1信号周期に1回で、内挿分割数が大きいとよく目立ちます。本稿ではまずεの読み方と誤差を示し、次にオフセットの発生源と大きさを一つずつ分析し、最後に段階的な測定方法と判定基準を示します。

誤差とεの読み方
A相を例に、A = a·cosθ + o_Aとします。リサージュ図形または単相波形から最大値と最小値を読み取ると
ε_A = o_A/a = (X_max + X_min)/(X_max − X_min)
B相も同様です。A = cosθ + εのとき、atan2の誤差は1周期に1回で、ピーク値は厳密にarcsin(ε)、微小量では約ε radです。両相にオフセットがある場合、ピーク値は約√(ε_A² + ε_B²)です。2048本では1%のオフセットが約1.0″に相当します。
測定にはDC結合を使います。差動信号は差動プローブで測るか、A+とA−を別々に測って差し引きます。AC結合ではオフセットが除去されてしまい、円の中心は常に原点にあるように見えます。
発生源と大きさ
差動2チャネルの受光の非対称。A = I₀ − I₁₈₀で、2チャネルの直流が照度、検出窓面積、受光素子の感度の違いにより±κだけ異なるとします。
I₀ = D·(1 + κ)·(1 + M·cosθ)、I₁₈₀ = D·(1 − κ)·(1 − M·cosθ)
差をとるとA = 2κD + 2DM·cosθとなるので
ε = κ / M
ここでDは各チャネルの直流、Mは変調度です。差動はもともと直流を打ち消すためのものですが、打ち消せるのは2チャネルに共通の部分だけで、残った非対称は1/M倍に拡大されます。κ = 1%、M = 0.5ではε = 2%で、2048本では約2.0″です。Mが0.3に下がると、同じκで3.3%になります(図2)。コード板側でκに寄与するのは、2チャネルの検出フィールド下にある透過部の透過率の違いです。たとえば残留膜、曇り、汚れが一方のチャネルにだけかかっている場合です。局所汚れの定量モデルは本ライブラリの汚れの記事を参照してください。
透過部と遮光部の面積比。0°と180°の2チャネルが同じトラックから来て検出窓も同じなら、両者が見る平均透過率はどちらもコード板のデューティ比D_cに検出窓のデューティ比を掛けたもので、直流は厳密に等しく、デューティ比の偏差はオフセットを生みません。しかし反転チャネルの代わりに固定基準レベルや独立した参照用フォトダイオードを使うと、デューティ比の偏差がそのままオフセットになります。インデックス窓のデューティ比が50%のとき
ε = (D_c − 0.5)·π² / (4·sin(πD_c))
D_c = 0.45ではε ≈ −12.5%で、かなり大きな値です。つまり同じ線幅偏差でも、真の差動構成では無害、基準レベル構成では主要な誤差源になります。
迷光と背景光。一様な背景光は両チャネルにあり、差動で打ち消されます。一方のチャネルにだけ当たる迷光が、そのチャネルの直流に占める割合をβとすると、ε ≈ β/(2M)です。ハブの縁、ハウジング内壁、クロム面の反射は、いずれも一方のチャネルだけを照らす可能性があり、M = 0.5ではβ = 2%で約2%のオフセットになります。
暗電流と回路オフセット。2チャネルの暗電流差ΔI_dによりε = ΔI_d/(2M·I₀)が生じます。I₀は各チャネルの光電流です。常温では一般に無視できますが、高温では8–10 ℃上昇するごとに倍増します。詳しくは本ライブラリの読取りヘッドの温度影響の記事を参照してください。アンプのオフセット電圧も、振幅に換算すれば同じくオフセットとして現れます。

段階的測定:オフセットを分解する
3ステップで測定します。各ステップとも通常動作時の振幅aで正規化し、同じ回転角、同じ温度を条件とします。
- 光源を消す:O₁を読む。これが回路オフセットと暗電流の和。
- 光源を点け、トラックの光路を遮る:光源とトラックの間に不透明な薄板を差し込み、O₂を読む。O₂ − O₁がトラックを迂回して受光素子に届く迷光の寄与。
- 通常動作:O₃を読む。O₃ − O₂が受光の非対称(照度、検出窓、受光素子の感度、コード板の局所透過率)で、基準レベル構成ではデューティ比偏差も含む。
図3は例示データです。総オフセット2.4%のうち、回路と暗電流が0.3%、迷光が0.6%、受光の非対称が1.5%で、重点的に対処すべき方向が一目で分かります。注意点として、ステップ2ではコード板表面自体の反射も遮られるので、その分はステップ3に計上されます。補足として二つの作業も行えます。高温でステップ1を繰り返し、暗電流の割合が増えるかを見ること。基準コード板に替えてステップ3を繰り返し、ステップ3の結果がコード板によって変わるなら、コード板の透過率かデューティ比に問題があること。コード板を回すと円の中心位置も動く場合は、オフセットが回転角で変化しているもので、別稿で扱います。

判定基準:精度クラスごとに配分する
オフセットの許容値は、それに割り当てた誤差予算E(秒角)で決まります。
ε_allow = sin(E·N/206265) ≈ E·N/206265
内挿せず矩形波出力とする場合、オフセットはコンパレータの反転点をarcsin(ε)電気角だけ動かすので、判定はエッジ位置で見ます。以下は配分の例です。
| 用途 | 要求の例 | 許容オフセットε |
|---|---|---|
| 矩形波4逓倍 | エッジ位置偏差 ≤ ±10° 電気角 | ≤ 17% |
| 矩形波4逓倍 | エッジ位置偏差 ≤ ±5° 電気角 | ≤ 8.7% |
| 2048本 内挿 | オフセット配分2″ | ≤ 2.0% |
| 2048本 内挿 | オフセット配分0.5″ | ≤ 0.5% |
| 5000本 内挿 | オフセット配分0.5″ | ≤ 1.2% |
| 10000本 内挿 | オフセット配分0.2″ | ≤ 1.0% |
オフセット自己校正付きの内挿回路なら静的なオフセットは除去でき、その場合の判定対象は校正後の残差とドリフトです。ただし出荷時のオフセットが大きすぎると校正範囲を食いつぶすので、余裕を残すべきです。たとえば出荷時オフセットは校正範囲の半分以下とします(例)。
設計上のポイント
- DC結合で、(X_max + X_min)/(X_max − X_min)によりεを読む。両相を別々に読んでから合成する。
- 差動が打ち消すのは共通の直流だけで、2チャネルの受光非対称κはκ/Mに拡大される。変調度を上げれば複数のオフセット源を同時に抑えられる。
- 真の差動構成はコード板のデューティ比偏差に鈍感で、基準レベル構成は非常に敏感。選定と受入検査では両者を区別して扱う。
- 迷光は「一方のチャネルにだけ当たるか」で評価する。ハブ、押さえリング、ハウジング内面は黒化処理するか、読取り領域を避ける。
- 光源消灯、トラック光路遮断、通常動作の3ステップでオフセットを回路、迷光、受光非対称の3つに分け、それぞれに対処する。
- オフセットの判定基準はε ≈ E·N/206265で配分する。スリット数が多いほど、同じ秒角予算で許容されるオフセットは大きくなる。
まとめ
円の中心が原点からずれるのはDCオフセットに対応し、誤差は1周期に1回、約ε radです。オフセットの主な発生源は差動2チャネルの受光非対称で、変調度によりκ/Mに拡大されます。デューティ比は基準レベル構成でのみ効き、迷光と暗電流は一方のチャネルにだけ作用するかどうかが問題になります。段階的に測定すれば総オフセットを分解でき、精度クラスに応じた許容値と比べて対処の要否を判断できます。
中国語原文記事の翻訳 (0207). ENC7 コード板メーカー(お問い合わせ) · 技術記事 · https://enc7.com
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